認定言語聴覚士とは?取り方・費用・メリットを6領域の認定者データ付きで解説
執筆: セラピストドットコム編集部(医療専門職が在籍する株式会社バックテック運営)
「認定言語聴覚士って、取る意味はあるの?」「具体的にどうやって取ればいいの?」――臨床経験を重ねた言語聴覚士(ST)が次のキャリアステップを考えるとき、認定言語聴覚士という資格に関心を持つ方は少なくありません。
この記事では、日本言語聴覚士協会が認定する認定言語聴覚士について、制度の概要から取得までの5ステップ、費用、更新要件、6つの専門領域の認定者数データ、そして2027年の新制度移行に向けた最新動向までを整理しました。「自分は目指すべきか」を判断するための材料として、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 認定言語聴覚士の制度概要と6つの専門領域の認定者数
- 取得までの5ステップと費用の目安
- 合格率・難易度の実態
- 取得する5つのメリットと年収への影響
- 2027年の新生涯学習制度への移行動向
認定言語聴覚士とは?制度の概要と目的
認定言語聴覚士とは、日本言語聴覚士協会が認定する民間の専門資格で、摂食嚥下障害・失語症・高次脳機能障害・言語発達障害・聴覚障害・成人発声発語障害の6領域があります。2026年3月時点で全国に合計1,178名が認定されており、言語聴覚士の国家試験合格者の累計約39,000人(厚生労働省)に対して約3%と、取得者は限られています。取得には臨床経験5年以上を前提に、基礎プログラム・専門プログラム・認定講習会(全6日間)・筆記試験の各ステップを踏む必要があり、国家資格とは別に特定の臨床領域における高度な専門性を証明する位置づけです。
認定言語聴覚士の定義と位置づけ
認定言語聴覚士は、言語聴覚士の国家資格を持つ方が、さらに専門性を深めるための認定制度です。日本言語聴覚士協会が「特定の専門分野において高度な知識と熟練した技術を有する言語聴覚士」として認定するもので、国家資格のように法律に基づく資格ではありません。
言語聴覚士の国家試験合格者数は、第27回試験(2025年)までの累計で約39,000人です(厚生労働省 言語聴覚士国家試験合格発表)。そのうち認定言語聴覚士は1,178名で、全体の約3%にとどまります。取得者が限られている背景には、臨床経験5年以上という受験要件に加え、基礎プログラム・専門プログラム・講習会・筆記試験という複数のステップを踏む必要があるためです。
認定言語聴覚士の6つの専門領域
認定言語聴覚士には、以下の6つの専門領域が設けられています。
| 専門領域 | 認定者数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 摂食嚥下障害 | 505名 | 42.9% |
| 失語・高次脳機能障害 | 349名 | 29.6% |
| 言語発達障害 | 126名 | 10.7% |
| 聴覚障害 | 79名 | 6.7% |
| 成人発声発語障害 | 73名 | 6.2% |
| 吃音・小児構音障害 | 46名 | 3.9% |
(出典: 日本言語聴覚士協会 認定言語聴覚士一覧)
摂食嚥下障害領域が505名と全体の約4割を占めており、取得者が最も多い領域です。急性期病院から介護施設まで、嚥下評価のニーズが高いことが背景にあります。一方、吃音・小児構音障害領域は46名と最も少なく、この分野の専門性の希少性が際立っています。
認定言語聴覚士の人数と領域別内訳
認定言語聴覚士は全6領域で合計1,178名が認定されています(日本言語聴覚士協会)。国家試験合格者の累計約39,000人に対して約3%という比率は、決して高い数字ではありません。制度の歴史がまだ浅いことや、講習会の定員枠による制約も影響していると考えられます。
領域別に見ると、摂食嚥下障害(505名)と失語・高次脳機能障害(349名)の2領域で全体の約72.5%を占めています。臨床現場での需要の大きさが、そのまま取得者数に反映されている形です。
認定言語聴覚士の取り方|取得までの5ステップ
認定言語聴覚士になるには、臨床経験5年以上を積んだ上で、基礎プログラム→専門プログラム→認定講習会(全6日間)→筆記試験という5つのステップを踏む必要があります。取得までの全体像を把握することが、計画的な準備の第一歩です。
認定言語聴覚士 取得までの5ステップ:
- 受験資格の確認 — 臨床経験5年以上 + 日本言語聴覚士協会の正会員であること
- 基礎プログラムの修了 — 生涯学習プログラムの基礎課程
- 専門プログラムの修了 — 6領域から1つを選択し、専門課程を修了
- 認定講習会の受講 — 2日間×3回(全6日間)を1年間で受講
- 筆記試験の合格 — 講習会最終日に実施
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1. 受験資格の確認 | 臨床経験5年以上 + 日本言語聴覚士協会の正会員 | ― |
| 2. 基礎プログラム修了 | 生涯学習プログラムの基礎課程を修了 | 1〜2年 |
| 3. 専門プログラム修了 | 6領域から1つを選択し、専門課程を修了 | 1〜2年 |
| 4. 認定講習会の受講 | 2日間×3回(全6日間)を1年間で完了 | 1年 |
| 5. 筆記試験の合格 | 講習会最終日に実施される筆記試験 | ― |
ステップ1: 受験資格の確認(臨床経験5年以上 + 協会正会員)
認定言語聴覚士を目指すための前提条件は、臨床経験5年以上と日本言語聴覚士協会の正会員であることの2つ。非常勤勤務の場合、経験年数の計算方法については協会に個別確認が必要となるケースもあります。
協会への入会は随時可能で、年会費10,000円の納入で正会員資格を取得できます(日本言語聴覚士協会 入会案内)。まだ会員でない方は、認定STを見据えて早めに入会手続きを済ませておくとよいでしょう。生涯学習プログラムの受講もスムーズに始められます。
ステップ2: 基礎プログラムの修了
日本言語聴覚士協会の生涯学習プログラムにおける基礎課程の修了が求められます。基礎プログラムは、ST全般に共通する知識・技術のアップデートを目的としたもの。指定された研修への参加やe-learningの受講を通じて、修了要件を満たす仕組みです。
日々の臨床と並行して進められる点はメリットですが、研修スケジュールは年度ごとに異なります。早い段階から年間計画に組み込んでおくのがスムーズでしょう。
ステップ3: 専門プログラムの修了
基礎プログラム修了後、6つの専門領域(摂食嚥下障害、失語・高次脳機能障害、言語発達障害、聴覚障害、成人発声発語障害、吃音・小児構音障害)から自身の臨床領域に合った分野を1つ選び、専門課程を修了します。
領域選択で迷ったら、現在の臨床業務と最も関わりの深い分野を選ぶのが基本。日頃の臨床経験がそのまま学習の土台になる領域であれば、スムーズな修了につながりやすいでしょう。
ステップ4: 認定言語聴覚士講習会の受講
専門プログラム修了後、認定言語聴覚士講習会を受講します。講習会は1年間で2日間×3回、全6日間のプログラム(日本言語聴覚士協会)。注意すべきは、この6日間を1年間で受講完了する必要があり、次年度への持ち越しが認められていない点です。
講習会では、選択した専門領域に関する高度な知識と技術を体系的に学びます。全国各地の会場で開催されるため、遠方から参加する場合は交通費・宿泊費の事前把握も欠かせません。
ステップ5: 筆記試験の合格
講習会の最終日に実施される筆記試験。講習会で学んだ内容がベースとなるため、6日間の講習にどれだけ真剣に取り組めるかが合否を分けるポイントです。
合格後、正式に認定言語聴覚士として日本言語聴覚士協会から認定を受けます。有効期限は5年間で、その後は更新手続きが必要になります。
認定言語聴覚士の合格率・難易度
認定言語聴覚士の合格率は公式に非公表ですが、講習会(全6日間)で体系的に学んだ内容が試験のベースになる傾向があります。試験そのものよりも、受験資格である「臨床経験5年以上」と「基礎・専門プログラム修了」を満たすための長期的なスケジュール管理が、取得に向けた大きな鍵です。
合格率の実態
日本言語聴覚士協会は認定言語聴覚士の合格率を公式に公表していません。そのため、「試験の難易度がどの程度か」を数値で示すことは難しい状況です。
ただし、講習会は全6日間のカリキュラムで構成されており、そこで学んだ内容が筆記試験の出題範囲となる構造になっています。講習会に真摯に取り組んだ受講者が合格する傾向にあると推察されます。合格率の数字を気にするよりも、講習会の6日間をいかに充実させるかに集中するのが建設的でしょう。
取得に向けた鍵は「長期的なスケジュール管理」
セラピストドットコム編集部の見解として、認定言語聴覚士の取得における本質的なハードルは「筆記試験そのもの」よりも、「受験資格を満たすまでの長い道のり」にあると考えています。臨床経験5年を積み、基礎プログラムと専門プログラムを修了し、1年間の講習会を受講する――この一連のプロセスには、最短でも6〜7年程度の臨床キャリアが必要です。
日常の臨床業務と並行して研修参加や学習を継続する必要があるため、年度ごとのプログラムスケジュールを見据えた計画的な準備が欠かせません。「取りたい」と思ったタイミングで始めるのはもちろん有効ですが、できるだけ早い段階から生涯学習プログラムに取り組み始めるとスムーズに進みやすいといえます。
認定言語聴覚士の費用|取得から更新までにかかるお金
「認定言語聴覚士を取るにはいくらかかるの?」――この疑問に端的に答えると、認定言語聴覚士の取得費用は講習会受講料の約80,000円が中心で、協会年会費(10,000円/年)・学会参加費(1回あたり約10,000〜20,000円)などの固定費を含めると、取得から5年間の更新までに10〜15万円程度が目安です(セラピストドットコム編集部調べ)。これに加え、居住地によっては講習会や学会への交通費・宿泊費が別途必要になります。
取得にかかる費用の内訳
具体的な費用項目を整理します。
| 費用項目 | 金額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 認定講習会 受講料 | 約80,000円 | 全6日間の講習会費用 |
| 日本言語聴覚士協会 年会費 | 10,000円/年 | 正会員であることが受験要件(日本言語聴覚士協会 入会案内) |
| 学会参加費 | 1回あたり約10,000〜20,000円 | 日本言語聴覚学会等。更新要件としても必要 |
| 交通費・宿泊費 | 個人差あり | 講習会・学会参加時に発生 |
(セラピストドットコム編集部調べ)
表の中で最も大きいのは講習会受講料の約80,000円です。講習会は全国各地で開催されるため、遠方から参加する方にとっては交通費・宿泊費も見過ごせない負担になり得ます。勤務先の出張扱いが認められるかどうかは施設の規定によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
更新にかかる費用
認定の有効期限は5年間です。更新のために学会参加や学会発表にも参加費・旅費が発生します。5年間で学会参加2回以上(更新要件の一つ)を想定すると、参加費だけでも2〜4万円程度のコストがかかる計算になります。
ただし、学会参加は臨床スキルの向上や最新知見の収集にもつながるため、コストだけでは語りきれないリターンもあります。「資格維持のための出費」と捉えるよりも、「臨床と学びの両方に投資する費用」と位置づけるのが建設的です。
認定言語聴覚士の更新要件|5年ごとに必要なこと
認定言語聴覚士の更新は5年ごとで、以下の3つの要件のうち2つを満たす必要があります(日本言語聴覚士協会)。
| 更新要件 | 内容 |
|---|---|
| ①学会参加 | 日本言語聴覚学会へ2回以上参加、または日本言語聴覚学会へ1回 + 関連学会へ1回以上参加 |
| ②学会発表 | 全国規模の学会において認定領域に関する発表を行う |
| ③社会的貢献活動 | 委員会活動や地域での啓発活動など |
更新の3要件(2つを満たす必要あり)
では、それぞれの要件は具体的にどの程度のハードルなのか。達成しやすさの目安とともに整理します。
①学会参加(達成しやすさ: ★★★) 日本言語聴覚学会へ2回以上の参加、または日本言語聴覚学会1回+関連学会1回以上が条件です。学会は毎年開催されているため、5年間で2回以上の参加は臨床を続けるSTにとって比較的達成しやすい要件といえます。
②学会発表(達成しやすさ: ★★☆) 全国規模の学会での症例報告やポスター発表が該当します。初めての学会発表に心理的なハードルを感じる方もいるかもしれませんが、認定STの取得を機に発表デビューするケースも少なくありません。
③社会的貢献活動(達成しやすさ: ★★☆) 都道府県士会の委員会活動や、地域の市民講座での講師活動などが含まれます。日頃から地域の言語聴覚士会の活動に参加しているSTにとっては、自然にクリアできる可能性があります。
更新を負担に感じないための工夫
更新要件は日常の臨床や学会活動の延長線上にある内容ですが、5年間は意外とあっという間です。以下のポイントを押さえておくと、更新時期に慌てずに済みます。
- 毎年の業務計画に学会参加を1回は組み込んでおく
- 認定取得後2〜3年目を目安に学会発表か社会貢献活動に着手する
- 更新時期(認定から5年後)をカレンダーに登録しておく
有効期限を過ぎても更新手続きを行わなかった場合、認定が失効します。再取得には改めて講習会の受講が必要になるケースもあるため、スケジュール管理には注意が必要です(詳細は日本言語聴覚士協会にご確認ください)。
認定言語聴覚士を取得する5つのメリット
認定言語聴覚士を取得するメリットは、専門知識の体系的な整理、院内でのリーダー機会の増加、学会活動への足がかり、転職時の評価向上、専門ネットワークの拡大の5つです。取得までの時間と費用がかかる点も含めて、総合的に検討することが大切です。
メリット1: 専門性の体系的な整理と臨床力の向上
日々の臨床で身につけた知識やスキルは、断片的になりがちです。認定言語聴覚士の取得過程では、基礎プログラムから専門プログラム、講習会を通じて、自分の専門領域を体系的に学び直す機会が得られます。
「知識の棚卸し」により、感覚的に行っていた臨床判断をエビデンスに基づいて説明できるようになる――これは認定STを取得したSTが共通して挙げるメリットの一つです。
メリット2: 院内でのリーダー業務・後輩指導の機会が増える
認定言語聴覚士を取得すると、院内のST部門において専門領域のリーダーとして位置づけられやすくなります。後輩STの指導やカンファレンスでの意見集約など、マネジメントに近い役割を任されるケースも見受けられます。
こうした経験は、将来的に主任や科長といった管理職ポジションを目指す際の実績にもなり得ます。
メリット3: 学会発表・研究活動への足がかりになる
認定ST取得の過程で専門プログラムに取り組むことは、学会発表や臨床研究への第一歩にもつながります。更新要件にも学会参加や発表が含まれているため、「取得→学会発表→更新→さらなる発表」という学びの循環が自然に生まれやすい構造です。
臨床だけでは得にくい研究的な視点を身につけることで、日々の業務に対するアプローチが変わったと語るSTもいます。
メリット4: 転職・キャリアチェンジ時のアピール材料になり得る
認定言語聴覚士は全有資格者の約3%しか取得していない資格です(日本言語聴覚士協会、厚生労働省のデータに基づく算出)。転職市場において、専門性を客観的に証明できる材料として、認定資格の有無は採用側の評価に影響を与える場合があります。
特に摂食嚥下障害領域の認定STは、回復期リハビリテーション病棟や介護施設において需要が高い傾向にあり、転職時の条件交渉で有利に働く可能性があるといえるでしょう。転職先を具体的に探す際には、[言語聴覚士向けの転職サイト比較](リンク ※該当記事の公開後に差し替え)も参考になります。
メリット5: 同じ専門領域のネットワークが広がる
講習会には全国から同じ専門領域のSTが集まります。6日間の講習を通じて形成される人脈は、臨床上の悩みを相談したり、最新の知見を共有したりできる貴重なネットワークになります。
日常の臨床では、同じ職場にSTが1〜2名しかいないという環境も珍しくありません。同じ専門領域で研鑽を積む仲間とのつながりは、孤立しがちなSTにとって精神的な支えにもなり得るのではないでしょうか。
言語聴覚士としてのキャリアの選択肢を広げたい方は、セラピストドットコムで最新の学習コンテンツやキャリア情報をチェックしてみてください。
認定言語聴覚士の給料・年収への影響
認定言語聴覚士の取得による直接的な年収アップは限定的ですが、専門性の向上を通じた役職昇進や転職時の評価向上により、間接的に年収が上がるパターンがあります。「認定を取れば年収が上がる」と期待するよりも、「キャリアの幅を広げる手段の一つ」として捉えるのが現実的です。
直接的な年収アップは限定的
認定言語聴覚士を取得したことで資格手当が支給される施設は、現時点では一部にとどまります。診療報酬の加算項目に認定STの配置が直接要件として設定されているわけではないため、施設側が手当を設ける経済的インセンティブが働きにくい構造があります。
言語聴覚士全体の平均年収は約444万円です(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、月給約31.0万円・賞与約71.7万円)。ただし、認定STと非認定STの年収差を示す公的な統計データは存在しません。「認定を取れば必ず年収が上がる」とは言えないのが実情です。
間接的なキャリアアップで年収が上がるパターン
一方で、認定STの取得が間接的に年収アップにつながるケースは確認されています。主なパターンは以下の3つです。
- 役職昇進: 認定資格を持つことで院内での評価が高まり、主任や科長への昇進が早まるケース
- 専門外来の担当: 嚥下外来など専門性の高い業務を任されることで、業務範囲と評価が広がるケース
- 転職時の条件交渉: 認定資格が採用側に評価され、より好条件のポジションを得るケース
年収アップを目指す場合は、認定資格の取得だけに頼るのではなく、役職の獲得や職場選びなど複合的なアプローチを組み合わせることが重要です。
言語聴覚士の年収について詳しく知りたい方へ
言語聴覚士の年収データをより詳しく知りたい方は、[言語聴覚士の年収は約444万円|年齢別・職場別データと年収アップ戦略](リンク ※該当記事の公開後に差し替え)の記事もあわせてご覧ください。年齢別・職場別の年収推移や、年収500万円・600万円を目指す具体的な方法を解説しています。
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認定言語聴覚士の専門領域別ガイド
認定言語聴覚士の6つの領域には、それぞれ異なる臨床背景と需要があります。自分のキャリアに合った領域を選ぶことが、取得後の活用度を左右する重要なポイントです。
摂食嚥下障害領域(最多: 505名)
摂食嚥下障害領域は認定言語聴覚士の中で最も取得者が多く、全体の約42.9%を占めます(日本言語聴覚士協会)。急性期病院の嚥下評価から介護老人保健施設での食支援まで、嚥下に関わるSTの活躍の場は幅広い領域に及びます。
高齢化の進行に伴い、誤嚥性肺炎の予防や摂食機能の維持・改善に対するニーズは今後も高まることが見込まれます。言語聴覚士全体の需給バランスや今後のキャリア展望については、[言語聴覚士の将来性](リンク ※該当記事の公開後に差し替え)の記事で詳しく解説しています。診療報酬改定においても嚥下関連の評価項目は継続的に注目されており、摂食嚥下障害の専門性は臨床現場での需要が安定しているといえるでしょう。
失語・高次脳機能障害領域(349名)
失語・高次脳機能障害領域は、認定者数349名で全体の約29.6%を占めます。回復期リハビリテーション病棟や生活期の訪問リハビリテーションにおいて、脳卒中後の言語機能回復や高次脳機能障害への介入は、STならではの専門領域です。
回復期リハビリテーション病棟では、多職種カンファレンスにおいて言語機能や認知機能の評価を担う中心的な役割をSTが果たしています。この領域の認定資格は、院内でのポジショニングを強化する要素になり得ます。
言語発達障害領域(126名)
言語発達障害領域の認定者数は126名で、全体の約10.7%です。発達障害への社会的な関心の高まりとともに、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスにおけるSTの需要は年々増加傾向にあります。
小児領域に特化したSTは全国的に不足しており、この分野の認定資格は希少価値が高い傾向にあります。ただし、講習会の開催頻度や定員が限られる場合もあるため、取得を目指す方は早めにスケジュールを確認しておくのがよいでしょう。
聴覚障害領域(79名)
聴覚障害領域の認定者は79名と、専門性の高さゆえに取得者が限られています。補聴器適合や人工内耳のリハビリテーションなど、聴覚障害領域のSTには高度な専門知識が求められます。
耳鼻咽喉科との連携が不可欠な領域であり、耳鼻科を併設する病院や聴覚リハビリ専門施設で活躍するSTが多いのが特徴です。新生児聴覚スクリーニングの普及に伴い、早期介入を担うSTの役割も拡大しています。
その他の領域(成人発声発語障害73名、吃音・小児構音障害46名)
成人発声発語障害領域(73名)は、構音障害や音声障害に対するリハビリテーションを専門とする領域です。脳卒中後のディサースリアや喉頭摘出後の代替発声の指導など、コミュニケーション機能の回復を支援します。
吃音・小児構音障害領域(46名)は、全6領域の中で最も認定者が少ない領域です。吃音に対する科学的なアプローチの研究が進む中、この領域の専門性を持つSTは非常に希少であり、今後のニーズ拡大が見込まれる分野でもあります。
認定言語聴覚士と2027年新生涯学習制度
注意: 本セクションの情報は2026年3月時点のものです。制度移行期は発表内容が変更される可能性があるため、最新情報は日本言語聴覚士協会の公式サイトで必ずご確認ください。
日本言語聴覚士協会は2027年度に生涯学習プログラムの完全移行を予定しています(PT-OT-ST.NET「【2027年に完全移行】日本言語聴覚士協会が『生涯学習プログラム』改定」)。新制度では現行の「ポイント制」から「単位制」への変更や、「専門言語聴覚士」という新たな資格区分の導入が予定されており、現行の認定言語聴覚士制度にも影響が及ぶ可能性があります。
新制度で何が変わるのか
2027年度完全移行予定の新生涯学習プログラムの主な変更点は以下の3つです。
- ポイントから単位制へ移行: これまでに取得したポイントや活動記録は「単位」への読み替えにより引き継がれる予定
- 学会講演の単位認定: 学会内の講演や講座の一部が、生涯学習プログラムの「活動単位」として正式に認定される見通し
- 専門言語聴覚士の新設: 認定言語聴覚士よりもさらに高い専門性と実績を求める新たな資格区分(修士以上の学位または査読付き論文2本、臨床経験10年以上などが要件として示されている)
「今から認定STを取得して意味があるのか」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、認定STの取得過程で得られる専門知識や臨床力は新制度の下でも十分に活きると考えるのが妥当です。むしろ、新制度で導入される専門言語聴覚士の申請要件として「認定言語聴覚士資格の取得と更新」が含まれる方向が示されていることから、現行の認定STの取得はキャリアの土台として機能し得ます。
認定言語聴覚士制度への影響
現行の認定言語聴覚士が新制度にどのように移行するかは、日本言語聴覚士協会の公式発表を継続的に確認する必要があります。2026年3月時点で公表されている情報としては、2026年度から新プログラムの要件で申請受付を開始しつつ、移行期間として従来のプログラムでの申請も受け付ける方向が示されています。
認定ST取得を検討中の方は、以下の点を日本言語聴覚士協会の公式サイトで定期的に確認しておくことをお勧めします。
- 現行の認定言語聴覚士から専門言語聴覚士への移行条件
- 移行期間のスケジュールと経過措置の内容
- 新制度における受験資格や単位の読み替え方法
よくある質問(FAQ)
Q1: 認定言語聴覚士は国家資格ですか?
A: いいえ、国家資格ではありません。認定言語聴覚士は日本言語聴覚士協会が認定する民間の認定資格です。言語聴覚士の国家資格を取得した上で、さらに特定の専門領域について高度な知識と技術を持つことを証明する資格として位置づけられています。
Q2: 認定言語聴覚士の試験は難しいですか?
A: 合格率は公式に非公表のため、難易度を数値で示すことはできません。講習会(全6日間)で体系的に学んだ内容が試験のベースになる傾向があります。受験資格である臨床経験5年以上とプログラム修了を満たすための長期的なスケジュール管理が、取得に向けた大きな鍵です。
Q3: 認定言語聴覚士を取ると給料は上がりますか?
A: 資格手当が支給される施設は一部にとどまるのが実情です。ただし、専門性の向上により役職昇進や転職時の評価向上を通じて、間接的に年収アップにつながる可能性はあります。言語聴覚士全体の平均年収は約444万円です(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」)。
Q4: 認定言語聴覚士は何年で取れますか?
A: 臨床経験5年以上が前提で、基礎プログラム→専門プログラム→講習会(1年間)の過程を経るため、最短でも6〜7年程度の臨床キャリアが必要です。日常の臨床と並行してプログラムを進めることになるため、計画的なスケジュール管理が重要になります。
Q5: 認定言語聴覚士の更新を忘れるとどうなりますか?
A: 5年の有効期限内に更新要件を満たさない場合、認定が失効します。再取得には改めて講習会の受講が必要になる可能性があります。具体的な再取得手続きについては、日本言語聴覚士協会に直接お問い合わせください。
Q6: 認定言語聴覚士と専門言語聴覚士の違いは?
A: 専門言語聴覚士は、2027年度完全移行予定の新生涯学習制度で導入される予定の資格です。認定言語聴覚士よりもさらに高い専門性と実績(修士以上の学位または査読付き論文2本、臨床経験10年以上など)が求められる見込みです。詳細は日本言語聴覚士協会の公式発表をご確認ください。
Q7: どの領域を選ぶのがよいですか?
A: 現在の臨床領域に合わせて選ぶのが基本です。摂食嚥下障害領域が最も取得者が多く(505名、全体の約42.9%)、臨床現場での需要も高い傾向にあります(日本言語聴覚士協会)。ただし、領域選びは「需要の多さ」だけでなく、自身の臨床経験や関心との一致度も重要な判断基準になります。
まとめ
認定言語聴覚士は、日本言語聴覚士協会が認定する専門資格であり、摂食嚥下障害をはじめとする6つの領域で合計1,178名が認定されています。全ST有資格者の約3%と、希少性の高い資格です。
取得には臨床経験5年以上を前提に、基礎プログラム→専門プログラム→講習会(全6日間)→筆記試験の5ステップが必要で、費用は講習会受講料の約80,000円を中心に10〜15万円程度が目安になります。直接的な年収アップは限定的ですが、専門性の体系的な整理、リーダー機会の拡大、転職時の評価向上など、STとしてのキャリアの幅を広げる有力な選択肢の一つです。
2027年度には新生涯学習制度への完全移行も予定されており、認定STの取得は新制度の「専門言語聴覚士」を目指す上での土台にもなり得ます。「学び続けるST」として自身の専門性を高めたい方は、まず日本言語聴覚士協会の生涯学習プログラムの詳細を確認し、取得に向けたスケジュールを描くことから始めてみてはいかがでしょうか。
まずは日本言語聴覚士協会の生涯学習プログラムを確認し、取得スケジュールを描いてみてください。セラピストドットコムでは、STのキャリア形成に役立つ学習コンテンツや、認定資格に関連する最新情報を発信しています。
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言語聴覚士のキャリア・資格について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
著者情報
セラピストドットコム編集部 京都大学大学院医学研究科で博士号を取得した理学療法士を代表とする株式会社バックテックが運営しています。社員には理学療法士や保健師といった医療専門職が多く在籍しています。医学的根拠に基づいたエビデンス・臨床経験を活かし、セラピストや医療職の皆様に、正確で信頼性の高い情報を提供しています。
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"text": "専門言語聴覚士は2027年度完全移行予定の新生涯学習制度で導入される予定の資格です。認定言語聴覚士よりもさらに高い専門性と実績(修士以上の学位または査読付き論文2本、臨床経験10年以上など)が求められる見込みです。詳細は日本言語聴覚士協会の公式発表をご確認ください。"
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"text": "現在の臨床領域に合わせて選ぶのが基本です。摂食嚥下障害領域が最も取得者が多く(505名、全体の約42.9%)、臨床現場での需要も高い傾向にあります。ただし、領域選びは「需要の多さ」だけでなく、自身の臨床経験や関心との一致度も重要な判断基準になります。"
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著者情報
セラピストドットコム編集部
京都大学大学院医学研究科で博士号を取得した理学療法士を代表とする株式会社バックテックが運営しています。社員には理学療法士や保健師といった医療専門職が多く在籍しています。医学的根拠に基づいたエビデンス・臨床経験を活かし、セラピストや医療職の皆様に、正確で信頼性の高い情報を提供しています。
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